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【偽書】チェリーブロッサム 〔咲くるは早咲きの魂。散るるは諸見の雛神輿〕28

伊納は私の顔を見て驚くも、由香里嬢が証拠を押さえてある事を説明し、今後何かあれば即通報すると言い渡され、渋々引き上げた。

「由香里さんが逆恨みされたりしら」

「その時はあなたみたいにぶちのめすのも悪く無いかな〜分かるんでしょ。あなたなら」

まあ、素人じゃない事は…。

「でも多勢に無勢とか闇討ちとか」

「しないしない。そんな度胸があるなら、あんな優男に先輩面してノコノコやってこないで最初から策を巡らすでしょ」

「そうか」

サカエが感心して見せる。

その道はあまり知らなくていいのよ。普通の陸上部女子校生なんだから。

「何にしても困ったらまず警察。こじれたら弁護士。この手合いにモジモジしていたらアッと言う間に食い物にされてズタズタにされてポイ捨てされちゃうだけよ。それじゃあ気をつけて帰るのよ」

私達はそう言い片手をあげてホテルへ戻って行く彼女に並んで一礼する。

「またお節介?ゆかりん

「えへへ。見捨てておけないのよね〜あんな場面」

「一人あんたみたいな娘がいたじゃない」

「そうね〜楽しみね。血の気も多そうだったし」

「やれやれ」

ロビーで出迎えた連れの女性が呆れて見せる。

「さて。では改めて駅に向かいますか」

サカエがそう言いかけた時、私達の目の前に磨きをかけた黒塗りの外車が停車する。

「お嬢様」

助手席から一人の背広姿の男の人が現れ、メイの前に立つ。

「瀬川さん…?」

「探しましたよ。こちらのお友達から連絡を頂いてやっと…。年末にも帰省せず、お父上もお母上もご心配なさっております」

メイは私の方を見る。

「ごめん。ちょっと文ちゃんに位置情報付きのメッセージを送ったのよ。捜索願いとかになっていたら困るでしょ」

仕方がないといった顔で、背広姿の男の人の方を向き直すと、メイは口を開く。

「嘘ばっかり。パパもママも日本には居ないんだから、怪しいものだわ」

「大晦日になっても明様がご帰宅されていないと知ったお二人は、心配なさってそれぞれ昨日別々にご帰国されたのですよ。今はお二人共ご自宅におられますよ」

「嘘…。二人共?」

「疑うならば、今お電話をお繋ぎ致します」

「…いいよ。瀬川さんが嘘をつかない人だって知っているから」

どうやら皐月家に長く勤めていらっしゃる執事さんみたいね。

あのメイが素直に引き下がるなんて。

偽書チェリーブロッサム 〔咲くるは早咲きの魂。散るるは諸見の雛神輿〕27

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